経済・相場

揺れる市場<中国不動産懸念とテーパリング>

目次

セルインメイ

米国の相場格言に「Sell in May, and go away; don’t come back until St Leger day.」(5月に売って相場を去り、セント・ロジャーデーまで戻ってくるな)があります。

米国は5月に本決算が集中するため株価が高くなる傾向にあり、5月に売り抜いて暑い夏はバカンスを楽しめという古くからある格言です。

なおセント・ロジャーデ−は9月の第二土曜日のことを指します。

季節的に8月は夏枯れ相場といって株価は低調であり、9月も季節要因として弱い傾向にあります。

しかしながら、2021年においては9月下旬に世界的な金融危機を想起させる大問題が発生しました。

リーマンショックの再来か<中国恒大ショック>

2008年に起きたリーマンショックは、サブプライムローンに端を発する不動産バブルの崩壊を起因とする世界的な金融危機でした。

一般的にお金を貸す際には、相手が社会的にどれほどの信用力があるかを審査しますが、サブプライムでは信用力の低い人を対象にローンを組んでいました。

このローンを使ってお金で多くの人々が、身の丈に合わない不動産を購入していたのです。

ところが不動産金融市場に異常はないとたかをくくっていた米国市場は、まことしやかにサブプライムローンの負債が積み上がっていたのを知りませんでした。

こうして、市場最大の経済危機であるリーマンショックは起こりました。

突然のバブル崩壊は、最大規模の信託会社であるリーマン・ブラザーズに耐えきれないほどの負債を与え、米国市場は愚か世界経済を破滅に導きました

2021年9月、中国で同じような不動産バブル崩壊の危機が押し寄せました。

中国第二の不動産会社である恒大集団(エバーグランデグループ)が、負債を支払うことができず債務不履行に陥るというニュースが流れたのです。

恒大グループへは、米国最大の資産運用会社であるブラックロックを始め、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)なども投資をしていました。

リーマンショックの再来というニュースによって米国市場は動揺し、ダウ平均は2,000ドルの暴落を引き起こしました

火消しに走るFRBとテーパリン

FRB(連邦準備制度理事会)では、日銀の「金融政策決定会合」に当たるFOMC(連邦公開市場委員会)を定期的に開催し、米国金融市場の金融政策について議論しています。

このFOMCは世界中の投資家が特に注目する会合であり、2021年9月のFOMCでは中国恒大の問題に加え、テーパリングの動向を見極めたいと二重の意味で関心を寄せていました。

FOMCの冒頭で、FRB議長であるジェローム・パウエルは中国の不動産問題に対し「中国独自の問題である」との声明を出し、仮に恒大が破綻したとしても米国経済への影響は限定的との考えを示しました。

この声明を受けて市場は中国不動産問題を折り込み出し、株価は急速に回復をしていきました。

現在、市場の関心事はテーパリングへと移行しています。

9月のFOMCでは、年内最後である11月のFOMCでテーパリングを決定し、年末12月からの開始が適切であると市場は予想しています。

いずれにせよ、金利の急騰などと合わせると年末まで神経質な市場展開が予想されます。

YuBiTi-WWS

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投資歴6年目の兼業投資家。【経験】に基づいた正しい【知識】をベースに投資関連の記事を中心に、多方面でのライティングをしています。読みやすく理解しやすい文章を心がけています。指値を【ゆびち】と読んだことがすべての始まり。

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