コロナショック後から堅調な上昇を続けてきた米国株ですが、直近では調整が続いています。
これから年末、そして2022年にかけての米国株はどうなるのか見通しについて考えてみます。
目次
米国株のアノマリー
米国株のアノマリー(理論的根拠は説明できない相場における経験則)として、9月に失速した相場が10月に底を打ち、年末にかけて上昇するというものがあります。
特に12月は「年末ラリー」と呼ばれS&P500は1番上昇する時期として知られていますので、ここから年末に向け相場が上昇に転じるのか注目です。
また、年ごとのアノマリーとしては、米大統領選の2年後の米国株(NYダウ)のパフォーマンスは良くないというものがあります。
過去を振り返ると選挙の年は+5.1%、翌年は+7.0%、2年後は+2.9%、3年後は+16.0%となっており、2022年は大統領選を基準に見た4年周期では1番パフォーマンスの良くない年に当たり、こちらもアノマリー通りとなるのか気になるところです。
企業業績は好調も懸念材料あり
2022年の米国企業の業績は2021年に引き続き好調が見込まれています。
しかし9月頃からS&P500の2021年と2022年のコンセンサスEPS(1株当たり利益)予想の引き下げが見られるようになりました。
その理由としてサプライチェーンの問題が挙げられます。
現在、世界的に半導体が不足しており製品の製造・出荷が予定通り進まない状況です。
コロナショック前より半導体の需要はひっ迫していましたが、新型コロナウイルスが追い打ちをかけています。
半導体以外にもナイキ($NKE)は新型コロナウイルスの影響で海外の工場の操業停止を余儀なくされるといった影響が出ています。
このサプライチェーンの問題の影響は、米国に生産拠点を持つ企業よりも海外に生産拠点を持つ企業のほうが大きいと見られています。
個別株に投資する場合は、このような点にも注意して銘柄を選別する必要がありそうです。
利上げ=即景気後退は考えにくい
米国株がコロナショック以降2021年夏まで順調に上昇してきた背景には大規模な金融緩和がありました。
FRB(米国連邦準備制度理事会)が9月に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)では、経済政策の維持を決定した一方で、パウエル議長はテーパリング(量的緩和縮小)については「早ければ11月の会合で開始を決定する」、「テーパリングは来年半ばまでに終了することが適当」と述べています。
そのことから11月のFOMCでテーパリングを決定、年内開始、2022年半ばにテーパリング終了となるとの見方が強くなっています。
また、パウエル議長は「テーパリングは利上げ時期に直接的な示唆を与えるものではない」とも明言していますが、2022年末もしくは2023年初めには利上げへと進むとの見方が大勢です。
金利上昇は株価への重しとなることには間違いありませんが、現在の米国債のイールドカーブ(利回り曲線)は順イールド(短期金利<長期金利)をキープしています。
そして、利上げが開始されたとしても金利は歴史的に見て低水準であることは間違いないため、すぐさま逆イールドに転じる可能性も低いと思われます。
過去を振り返ると、米国市場の1990年以降の3回の景気後退局面ではいずれも景気後退局面を迎える前に逆イールド(短期金利>長期金利)が発生しており、逆イールド発生から景気後退までは2年程度を要することがわかっています。
したがって景気後退局面が訪れるとは考えにくいです
芸国株は底堅く推移する
S&P500はこれまで16.91%の年初来リターン(10/9時点)を記録していますが、上記を踏まえると年末から2022年にかけても同様の上昇を見込むというのは難しい一方、景気後退入りの可能性も低そうです。
全体として企業業績は好調な見込みです。
相場をけん引していくのは、サプライチェーン問題の影響を受けにくい企業、例えばクラウドを介したサービスを提供するハイテク企業などが中心となって上昇を目指すと考えられます。
テーパリングや利上げ開始が決定するようなタイミングでは調整が入る可能性があるものの、調整局面では量的緩和の影響でMMFに眠っている巨額の資金が買いに向かう可能性も指摘されていることから底は堅く推移していくことが期待できそうです。
(執筆:nac(nakamuranac))