最近、様々なリスクが表面化していることから、株価が下落傾向にあります。
そのリスクの一つに米国の債務上限問題があります。
この問題を簡単に説明すると「米国の資金繰りが苦しくなり、借金を返済できなくなる可能性がある」ということです。
これだけ聞くと、株価大暴落必至の大事件のように思いますが、メディアはなぜかそれほど大きく取り上げないですよね。
そこで本記事では、今話題となっている米国の債務上限問題を解説するとともに、なぜ大騒ぎされないのか過去の事例も交えて解説いたします。
目次
債務上限とは
国の資金調達手段の一つが国債の発行ですが、あまりにも多くの国債を発行してしまうと、市場にお金があふれてインフレに陥ります。
これを避けるため、発行できる国債に上限を設けています。これが「債務上限」です。
仮に債務上限に達した場合、新たに国債を発行できず資金を調達できなくなるため、国債の償還や利払いが滞る債務不履行(デフォルト)に陥ってしまいます。
国がデフォルトしてしまうと、国債の借り手にもデフォルトが連鎖していくため、経済が崩壊してしまいます。
こうなってしまうとインフレどころの騒ぎではないですね。
このような事態を回避するため、債務上限を引き上げたり、上限の適用を一時的に凍結する措置が取られます。
現在起こっていること
イエレン米財務長官より、連邦政府の資金が10月18日にも枯渇し、デフォルトに陥る可能性がある、という警告がありました。
デフォルトは何としても回避しなくてはならないので、債務上限引き上げを今すぐ引き上げればよいと思うのですが、ここで政治的な問題が発生します。
バイデン大統領が属する民主党は上院でも過半数の議席を確保しているため、特別な手続きを取ることで民主党単独で債務上限引き上げを強行することができます。
しかし、債務上限引き上げは借金を増やす措置ですので、民主党としては強行手段を取らずに、共和党と問題を共有したいという思惑があります。
他方の共和党としては、あくまで民主党だけの責任で引き上げさせたいという思惑があり、債務上限引き上げに関する法案に反対しています。
このように政治的な駆け引きがあるため、債務上限を簡単には引き上げることができないのです。
過去の事例
過去にも債務上限問題は何度も発生していますが、いずれもデフォルトに陥る前に債務上限引き上げ等の法案が成立しています。
その中でも2011年は、ギリギリのところで債務上限引き上げの法案が成立しましたが、格付け会社が米国債の格下げを発表しています。
今回も政治の駆け引きをしているだけで、債務上限が引き上げられるというのが大方の予想です。
このため、大きな問題として取り上げられていないのでしょう。